学生時代はまともなバッグを持っておらず、それこそ安い変なバッグを使ってみたり、アリーナのエナメルを使ってみたり、でかかったり、小さかったりで、今思い返してみれば何をメインで使用していたかもハッキリと思い出せない状態。
大学に行ったり、部活に行ったり、バイトに行ったりと規則的で淡々と日々を過ごしていくだけであれば、そんなバッグだけでよかったのだろうけど、ちょっとでかけたり、 荷物があるときはどれも帯に短し襷に長しのモノしかなく、毎回困ってたのは覚えてる。
特に、電子機器のバッテリーを気にするようになってからというものは、荷物がひとつ増えて、どこに収納するかが大問題だった。冬ならコートやその他結構服を着こむから、必然的にポケットも増えて、案外解決するものだけど、薄着の夏とかはどうしようもない。
まずは形を考えることに。リュックやトートだとお手軽さにかけるため外れた。肩掛けは当時よく使う種類のバッグで複数持っていたこともあり、 そこまで欲しいとも思わなかった。ポシェットはサイズ選びが大変だし外すとかっこ悪くなりそうだったのでナシ。ウエストバッグなら両手も空くし、長くすれば肩掛けにもできるしということで、結局ウエストバッグを探すことに。
今度はメーカーやデザインを模索していたら、なぜかポーターに行き着いた。ポーターといったら同期がよく使ってたため、テロテロのナイロン製の生地しか思いつかなくて、はじめは丈夫なのかなぁと疑問に思っていたものだけど、ちゃんと探してみると、がっちりとした作りの商品もある。
それが、 ポーターのヒートシリーズだ。軍用のジャケットにも使用されている生地で、しっかりと作りこまれている。しなやかさはないけれど、これならどこにでも持っていけそうな洗練さがある。
マルイかどこかのバッグ売り場で、まさに一目惚れだった。サイズは2タイプあったけど、当時は荷物が多い人で、迷わず大きい方を選んだ。持ち歩くモノの数が劇的に減った今から見ても、このサイズ選びで間違いはなかったと思う。 行こうと思えば、このバッグ一つで1泊旅行位はできるだろう。
どうしても欲しくなったそのバッグは、なんと24歳の誕生日のプレゼントとして彼女が買ってくれた。本当に欲しい物を、もらって本当に嬉しい人から送ってもらえた幸せ。毎日使っていた。
ヒートシリーズということで、デリケートに扱うより、ダイナミックに使用したほうがいい。ちょっとくらいのキズはむしろ勲章で、逆に愛着が湧くんじゃないかと思う。明らかにキズモノでない限りは。。。
それは、使い始めて一年も経たない冬の終わりに、いつものようにバッグを背負って、原チャリに乗った。
またいで足で蹴りつつ、小さな段差を越えたときいつもより沈んだ気はした。だけどその時はそこまで気にせずアクセルを捻った。
少し走ったとき、後輪がヌルッと滑る感じがした。変だなと思いながらもそのまま走る。
直線の道路に出て、一気にアクセルを開こうとしたその時に、後輪が大きく滑り、制御が効かなくなった。
結構なスピードで走っていたから、まずはブレーキをかけようとするも、かけたとたん車体が大きく揺れて、逆に危険だと感じてブレーキを離す。
とはいえ、減速しなければ危険なので、足をベタ擦りさせて減速を試みるも、さっきのブレーキのせいで車体はブレてなかなか安定しない。
ついに後輪が右に滑って、車体が左に倒れた。
まずは左足を逃がして、原付の上に登った。サーフィンしてるみたいになっていたと思う。それでも体もバランスを崩していたので、背中を擦ってしまった。
やっと車体が止まった。周りを確認する。奇跡的に車はいなかった。もし来てたら大事故につながっていたに違いない。
次に、体に異常がないか確認。こちらも奇跡的に無傷。あんな事故を起こしてなんで無傷でいられるのか、ちょっと笑みがこぼれた。ただまぁジーンズの裾は道路と擦れたせいで少し破れていた。
そして事故原因の究明。結果は後輪のタイヤの脱輪。空気が緩くなってて加速とともに脱輪してしまったようだ。
一旦、落ち着いて周りを見回す。そうだ!バッグは?と思い、背中のバッグを前に回す。
唖然とした。
バッグの表面に切り傷がたくさん入っていた。事故の衝撃よりも、一番大切なモノにキズが入ったことがショックで仕方なかった。
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